上海万博も前途多難? 『立ち退き』めぐり住民怒る(東京新聞)

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 北京五輪に並ぶ中国国家プロジェクトの上海万博まで、五月一日であと二年に迫る。事務局は「準備は順調」と言うが、チベット問題が万博開催にも影を落とす。会場予定地からの立ち退きをめぐっても住民の不満が依然くすぶり、テーマである「より良い都市、より良い生活」実現のため、補償など対策の充実が求められている。 (上海・小坂井文彦)

 上海を流れる黄浦江両岸の会場予定地では三・三平方キロの造成が進み、立ち退いた一万八千世帯が暮らした面影はどこにもない。転居者は、会場から南に約十五キロの新興住宅地「世博(万博)家園」に暮らす。柴国〓さん(59)は昨年二月、夫と足の不自由な長男(35)とともに引っ越した。

 以前の住居は広さ三十六平方メートルでトイレは共同。新居は風呂付きの八十平方メートルで、居住環境は改善されたが、「息子が医者に通えないし、通勤でへとへとになる」と憤る。

 近くに医療機関は診療所しかなく、一路線のバスも一時間に一本程度だ。万博事務局は「人の欲にはきりがない。二年以内に地下鉄が開通し、病院もできる」と強調するが、住民感情は置き去りのままだ。

 立ち退き補償金にも不満があるという。柴さん一家は約三十五万元(約五百二十万円)だが、新居の代金が強制的に差し引かれ、残るのは約七万元(約百万円)。それも仲介会社が支払いを渋り、提訴して二月にようやく受け取ったが、いまだに受け取れない人もいるという。

 会場予定地の端では今も十数戸が暮らす。五人家族の蔡鴻祥さん(50)は「ここは会場外と言われていたのに、今月、立ち退けと言われた」と言う。

 世博家園に空きはなく、転居先はさらに十数キロ離れた地域。借家のため補償金では新居の代金すら払えない。逆に支出を迫られ、蔡さんは「暮らせない」と途方にくれる。

 中国では昨年、物権法が制定され、住民の権利意識が高まっている。住民の不満はデモにもつながる。

 万博開催に向けた社会不安が解消しない現状に、事務局国際参加展覧部の周先強副部長は「開幕直前にチベット暴動のような妨げとなる問題が起きる可能性はある」と危機感を募らせる。参加予定の二百二国・機関のうち契約完了はまだ二十一カ国。辞退が相次げば成功はおぼつかない。

 「政治と国際イベントは別。万博は五輪以上に世界が交流する場なのだという意識を広めたい」と周氏。既に東京やソウルでイベントを開催した。

 警備面にも心配がある。今年摘発された中国内の「テロ組織」は、上海でも外国人の誘拐や毒ガス散布を計画していたという。五輪より開催期間が長く、来場者数も多い万博は、テロの格好の標的だ。

 かといって、一時は弁当の持参まで禁じた愛・地球博(愛知万博)のように警備を強めすぎれば、祭りの雰囲気が損なわれる。事務局は警備のさじ加減に頭を悩ませている。

<上海万博> 2010年5月から10月末まで開催。202の参加予定国・国際機関、7000万人の来場予定者数は過去最大規模。バーチャル会場の設営も予定され、インターネットを通じても「来場」が可能になる。

※〓は女へんに弟
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