「特別管制下」の民主化と人権

2008年07月06日

Posted by Love_China at 19:00 │Comments( 0 )TrackBack( 0 )
「特別管制下」の民主化と人権(MSN産経ニュース)

 どう見ても子供たちの親にはみえない鋭い目つきの男が数人いた。そのうちのひとりがビデオで記者(野口)をしつこく撮影する。さらに、記者が乗った車を2台で尾行してきた。こうした目に何度も遭った。

 四川省大地震の被災地の綿竹市。校舎が倒壊し児童120人余りが死亡した富新第2小学校などで取材していたときのことだ。

 地震で倒壊または損壊した校舎は約6900棟にのぼり、全体の死者数のうち児童は1割近くに上るとみられている。そして、1000人弱が今も見つからないとされる。

 「校舎は手抜き工事だった。天災じゃなく人災だ」と、子供たちの無念をはらしたい遺族らは叫ぶ。綿竹市だけではなく、各被災地で校舎の倒壊は“敏感”な問題になっている。遺族らによる告訴や提訴の動きが出ると、武装警察隊員や公安当局が学校を取り巻き、「特別管制」として封鎖する。監視下に置かれている父母もいる。

 「電話も盗聴されている」。ある父母はこうささやいた。五輪を目前に控え、当局は、校舎の倒壊問題が「社会の不安定要因」として拡大する事態を防ぐ必要に迫られているからだ。

 香港の人権団体は、綿陽市公安局が同市に住む西南科学技術大学の元教師、曽宏玲さん(56)を、国家政権転覆扇動罪の疑いで6月9日に拘束したと伝えた。倒壊した学校の手抜き工事などを告発する文章を、インターネットに掲載したためだ。


 手抜き工事に関する暴露や批判は国内メディアでは“ご法度”だ。校舎が倒壊した現場に国内メディアの記者はいない。規制が強化されているからだ。関係者は「北京五輪が迫り、逆に締め付けが強化された。人権状況の改善はみられない」と批判する。成都では、人権団体「天網人権事務センター」の責任者ら民主・人権活動家3人が、レストランから数人の集団に車で連れ去られ行方不明だと伝えられる。

 北京五輪の開催が決まった際、中国が「民主化に向けて前進するか、人権状況が変化する」と期待した中国人は少なくない。

 しかし、民主・人権活動をしてきた代表的な人物だけでなく、無名の活動家や市民も刑務所にいる。釈放されても外国人記者の取材に応じたり、論文を発表するなどの活動はしていない。五輪を前に、こうした活動からは根こそぎ“一掃”されたかのような印象すらある。

 4月中旬、弁護士だった倪玉蘭さん(48)がついに逮捕された。北京五輪の再開発にともなう強制撤去と、撤去後の不明朗な土地取引問題にかかわっていた女性だ。

 倪さん自身の家も撤去の対象となり、頑として動かなかったひとり。強制撤去に来た業者、警戒する公安当局者の数十人が自宅を取り巻き、その際に倪さんが作業員をこづいたとして、公務執行妨害で逮捕されたのだ。

 「五輪の安全開催を理由に当局は言論を統制し、人権を抑圧している」。倪さんは政府をこう批判していた。当局にしてみれば、倪さんは極めて煙たい存在である。

 6月中旬、倪さんの弁護士は公安省などに告発状を提出した。逮捕される際に警官からけられ、聴力が低下するなど負傷したとして、調査と警官の処分を求めているのだ。

 2002年春、倪さんは五輪開発にともなう強制撤去の現場を撮影していた。その場で当局に拘束され、「警官から十数時間も殴打された」(倪さん)。足が不自由になり松葉づえなしでは歩けない体になり、弁護士資格も失った。

 当局の最も厳重な監視下に置かれていた活動家の一人に、胡佳さん(35)がいる。記者が自宅を訪問するたびに、胡さんは「五輪という光の裏にある影を知ってほしい」と話していた。

 昨年12月に拘束された。外国人記者の取材を受けたことと、彼が書いた文章が国家政権転覆扇動罪にあたると認定され、今年3月には懲役3年6月の実刑判決を受けた。「中国の政治、社会制度を中傷し悪意あるうわさを広めた」(国営新華社通信)とされた。妻子が残された自宅は今も監視されており、外国人記者は入ることができない。

 人権派弁護士だった高智晟氏、盲目の人権弁護士として知られ、服役している陳光誠氏…。名前を挙げるときりがない。

 政府を批判する言論は「特別管制下」にある。

   (北京 野口東秀)



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